答えがないから悩む。ペットの最期をどう見送るか~認定動物看護師 武田真優子の場合~

高知県須崎市在住の、動物看護師のまゆゆこと 武田真優子 @aisu_dog です。

ペット泊まれるすどまり宿「どうぶつすどまりBOOK」のオーナーをしたり、絵を描いて理解の手助けをするグラフィックコネクターをしています。

今回は、 2015年08月16日 に書いたエントリのリライトをお送りします。

この記事には、いまだにコメントが付いたりメッセージが送られてきます。それだけ、最期をどう見送るのかということに悩みさまよう方がいらっしゃるのだろうなと思います。

そしてこの状況は、実はあまり変わっていないのかもしれないな、とも思っています。

病院サイド、つまり獣医療関係者と、ペットと共に暮らすご家族の思いがすれ違っている時。

そこに気づいた動物看護師は、いったい何ができるのでしょうか。


今回は自分の経験をもとに書いた過去エントリをアップデートしながら書きます。このお話は「最後のときまでそこそこ時間がある」、専門的にいうと「ちいさなグリーフを継続的に感じ」ていたケースのお話です。

🐶🐱🐰

「あなたには、なににも代え難い、ペットはいますか?」

このページに辿り着いてくださったあなたには、きっと愛しているペットがいることと思います。

「あなたのペットは、今、どんな状態ですか?」

あなたは、なんどもなんども、獣医師と相談を重ねて、それでもなにか方法はないのかと、検索をして、辿り着いてくださったのかもしれませんね。

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先に申し上げます。

残念ながら、このまま読み進めていただいても、期待する答えはございません。ただ、このように考える方法もあるんだ、と一例になれることを願って、この文章を書きました。

私は、動物看護師です。

目の前で亡くなるペットを、幾度も見てきました。
亡くなったという知らせも、何十何百と聞いてきました。

いつまでも、まったく慣れることはありません。。。

また、自分が暮らすペットが亡くなるとわかったときには、彼女のこと、そして自分のことを考え、先が見えないトンネルの中にいるかのような、そんな気持ちにも、なりました。

藁をもすがる思い、自分サイズですが、わかります。
その意味では、ほんのすこしは、お役に立てるかもしれません。

現在(2015年8月16日時)、私は、7歳と7ヶ月の2匹のウサギと暮らしていす。ヒトでいうと、60歳くらいと、16歳くらいです。

私の身になにかが起こらない限り、一緒に仲良く年を重ねると確実に、彼らは私よりも早く、亡くなります。私も、いつかはなくなります。これは、避けようがないことですよね。

けれど、避けられないからそのことを嘆き悲しむのではなく、考えないようにするのでもなく、その年齢に合わせて共に暮らすヒトが彼らにできる「そのときのベター」をしてあげるのがいいのかなと、そう思います。

どのようにしたら、彼らの最期を、彼らにとっての「ハッピーな空間」あふれる中で迎えさせてあげられるのか。こう考えることは、今、この瞬間からでもできることです。

ゆっくりでいいので。深呼吸をして。
あなたも一緒に、考えてみませんか?

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これから、

悩んでいるあなたには、「ひとつの考え方」を、
これから老いてゆくペットと暮らすあなたには、「ひとつの経験」を、
ペットと暮らし始めたばかりのあなたには、「ひとつの物語」を、

お話ししますね。

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本名はちろるちょこ。でも誰も本名では呼ばず。
ちーちゃん、にー、にーにょ、と不思議な名前でも呼ばれていました。ここでは統一して「ちろる」と呼びますね。

ちろるは、 2008年1月20日に、亡くなりました。
8歳。未避妊の女の子で、8歳は、かなり長生きです。

(在命中、もちろん不妊手術を検討しました。けれどその時点で5歳超えており、家族で話した結果、「彼女になにか起きたら、またその兆候が見られたら手術をする」と決まりました。)


ちろるは、弟のことが大好きで。私のことは、大嫌いでした。
これは、世話をする人が嫌われてしまう、ペットと暮らしている人なら頷いてくださるだろう、「あるある」かもしれませんね。

この距離感…

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2004年夏でした。

ちろるが、急に食べなくなってしまったのです。

私は当時、すでに動物看護師として働いていました。勤務先の院長先生に「臼歯過長症」と診断され、麻酔下で臼歯を切っていただきました。ウサギの「臼歯過長症」自体は、それほど珍しい症状ではありません。

ウサギの歯は一生伸び続ける歯を持ちます。食事のとき、上下の歯で削り合うことで、彼らとってちょうどよい歯の長さを保つんですね。

このバランスが崩れたとき、口の中で歯が伸びすぎてしまう。この状態を「臼歯過長症」といいます。もちろん、前歯の伸びすぎの状態もあります。

ちろるは、ちいさな頃に干草を十分にあげなかったため、食べなくなっていました。大きくなってから、ウサギに食事を変えさせることは、とても難しいのです。当時は私は中学生で、無知でした。 干し草がウサギの歯にとってどれだけ大切なものかを知りませんでした。

(そして無知ゆえ、ちろるより1か月先にいた女の子を、1歳半で亡くしています。このことが、私をウサギ専門病院へ連れて行くのですが、これはまた別の機会に。)

幸いなことに、ちろるの「臼歯過長症」は、左奥の歯が柱のように伸びるタイプ。半年に1回の臼歯処置で切り抜けることができました。(口の中を傷つけるタイプの伸び方ですと、2週間から1ヶ月ごとに処置をすることもあります)

ちろるの2回目の臼歯処置のときには、私はウサギ専門病院で動物看護師をしていました。

臼歯処置の間隔は、体幹ですが、年月を経ると狭まっていくことが多いです。ちろるの臼歯処置も、半年に1回から、3ヶ月に1回と短くなりました。

「臼歯過長症」は、歯が伸びると切っていれば、終わりでないところが厄介です。歯に正常な力が加わらないからこそ、歯が口の中を傷つけるように伸びてしまう。これは、歯の根っことっても負担があります。その負担により炎症が起き、膿んでしまうことがあります。

ウサギの場合、動物種なのか一度膿んでしまうとほんとうに治りにくく、膿を外科的に取り出すことが必要となる場合が、があります。


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2007年8月、ちろるの口の中に異変が見られました。
左下顎、舌の下の粘膜が、赤黒くなっていたんです。

この日から、抗生物質を飲ませはじめました。
けれど、10月には口をモグモグしだして。何も食べていないのに口を動かすのは、何らかの違和感がある動作です。

その後、すぐに下顎が腫れてきました。同時に、食欲が落ちてきました。


私は動物看護師です。経験上、ウサギの予後(これからどうなるかの見通し)が推測できてしまいます。

彼女はこれから食べたい気持ちがあっても、自分で食べられなくなり、痩せてゆくでしょう。痛みでのたうち回ることになるかもしれません(常に炎症が起きている下顎骨は、変形してゆくことがあります。骨が変形するんです…)。

ちろるは体重が2.0kgありましたが。体重が1/3落ちたら、つまり1.3kgになるころには、生死の境にいるでしょう。

私はこの時点で、獣医師に相談をしました。なぜか。
安楽死を選択するかの相談をするためでした。

動物には、安楽死が認められています。私も何度か立ち合ったことがあります。安楽死を選択されたご家族の、その理由はさまざまでしたが。

たとえ獣医師に相談をしても、決めるのはちろるの家族です。当時は私がちろるの世話をしていたので、最終的は判断は私がすることになっていました。

獣医師と相談をし、考え、決めたことは、3つ。

1)これから食べられなくなり、流動食を始めたとして。彼女がそれを食べる限りは「生きる意思がある」と判断する

2)痛みは、可能な限りとる

3)食べなくなったあと、延命はしない

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ちろるは私のことは、大嫌いでした。

毎日の投薬、1日2回の流動食。もっと私のことが嫌いになりました。自分で食べることができなくなると、みるみる痩せてゆきました。

(もちろん1日に何度も流動食をあげたら食べたとは思います。けれど、当時の過程時ない状態、勤務状態ではこれが限度でした。かつ、ちろるは嫌がっていましたので、食べるからといって無理やりし続けることが彼女にとって良いこととは、当時も今も思えません)

きれいな茶と白の被毛を持っていたちろるの姿は、この時大きく変わっていました。

左目の周りは涙が溢れ、顎下は大きく腫れ、重そうでした。
身体はやせ細り、顔と身体のバランスはもはや崩れていました。

元気がなく、じっと座っていることが多い。
膿が口の中に出るので、ずっとモグモグと口を動かす。

彼女からは膿の臭いがし、
食べないことによってお腹の調子が崩れ、便も臭いました。
きれい好きな本人が、一番辛かっただろうと、今も思います。

お正月が開けた頃から。

私のことが大嫌いなちろるが、私に寄り添うようになったんです。
痛かったり、辛かったり、そういう気持ちがあったのかもしません。
彼女の体重は1.4kgになっていました。

そんなある日、ちろるがいる部屋の中から、

「バッタン!バッタン!!」

と大きな音がしました。その音に驚いて部屋へ行くと、彼女が部屋の中で暴れ回っていました。明らかにおかしい。
彼女の顎の炎症は上顎の目の前まで達し、骨を変形させ始めていました。私はは獣医師から指示されていた最高量の痛み止めを飲ませました。他の臓器への影響が一瞬過るも、今の、この瞬間の痛みをなんとかしてあげなければ、と、とっさに判断しました。

と同時に、あと数日の命かもしれない、とも、思いました。

ちろるがケージ内で暴れまわっていた日から2,3日しないその日。

仕事からの帰宅後、部屋の隅にいる縮こまっているちろるに流動食をあげました。

ちろるは、一切、口を動かしませんでした。

ああ…さよならなんだね…がんばったね。

そっと、部屋に戻しました。


私は三兄弟で、弟と妹がいます。この時期、三兄弟が揃うことはほぼなかったのですが、この日だけ、珍しく揃いました。

ちろるは、部屋の壁にからだを預けていました。私は、自宅に聴診器があることを思いだし、心音を聞きました。やはり、不規則に聞こえます。

「心音が変だから、今日、亡くなるかもしれないよ。」

そう、弟と妹に伝えました。

程なく、ちろるは、自ら横になりました。心音は乱れています。私は聴診を続けています。その間隔が小さく、ゆっくりになってきました。

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ここまで読んでくださったあなたは、命あるものの命が尽きるとき、つまりどうやって亡くなってゆくかを、ご存じですか?

スーッと、眠るように亡くなることは、本人も、そして見ている自分も、自分が当人になったときも、理想ではありますよね。けれど、それほど多くありません。バタバタと暴れてみえることが、多いかもしれません。けれど、痛みは感じていないと言われています。


その意味で、ちろるの最期は、穏やかなほうだったと思います。
弟妹にちろるの心音を聞いてもらい、亡くなったことを二人にも確認してもらいました。

「ありがとう」

次の日、ちろるをペット葬儀に出し、数日後、お骨が戻ってきました。そのお骨は、かわいい、白い布に包まれていました。

*****

私とウサギのちろるのお話は、ここまでです。

私がこの経験からわたしが学んだことは、

家族に「どこまでするか」を決めたら、状態が変わったとしても大木のようにどっしり構えていること。

もちろん、ペットの状態を見て、獣医師や信頼できる方と相談の上で、方針を変更することはあるでしょう。それが自然です。

ペットのことを話すと、周りの方があなたに向けて、

アドバイスをくださったり、
励ましの言葉をくださったり、

するかもしれません。けれど、その意見をくださったことに感謝はすれど、受け入れる必要はありません。

あなたと、ペットと、信頼できる人と決めたことを中心に置きましょうね。

とはいえ。私も日々、

「これがちろるにとっていいのか」と考えていました。
どっしりと大木のように構える、なんて、できていたでしょうか。わかりません。ちろるの前でめそめそすることもありました。けれど、私が泣いても彼女が流動食を飲めるわけでも、ひとりでに改善することもないのです。

もちろん、治療をしない、という選択肢もあります。

また、獣医師からの治療をすべて受け入れずに、ペットの様子と自分の希望を伝えることは、できるんですよね。

なにが正解なんて、ありませんから。

たとえ「余命3ヶ月」と言われたとしても、

「どのようにしたら、その子の最期を安心で安全に迎えさせてあげられるのか」は、あなた次第、なんです。
1歳くらいの幼児の家族になったと思うとイメージしやすい方もいるかもしれません。

いつも呼んでいる呼び方で、
大好きなことをしつつ、
大好きな食べ物をあげたりして、

その日が来るまでの時間を、
ハッピーに過ごすことはできるんですよね。

これが「 その子の最期を安心で安全に迎えさせてあげられるのか 」ということかなって思います。

動物はシンプル。
元気だと食べる。元気がないと食べない。
今は自分のココが悪いから、走ってはいけない、とは、わからない。

だからこそ、家族としてできることは、たくさんあるはず。
信頼する人が側にいるだけでも、安心できるんですよね。


動物看護師も、ただのヒト。そこにかかわる仕事をしているというだけで、ペットの最期をどう見送るかということは悩みます。

なにが良いのかの正解は、ないのです。

どうか、ひとりで悩まないで、信頼できる獣医師や友人にご相談くださいね。

もし、そのように信頼できる方がいない場合。
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お困りのときには、気軽にお声がけくださいませ。

ほな、また!